聴力検査での指摘。

実は先週、脳ドックを受けた際に、自動的にセットになっていた聴力検査。

人生で初めて、聴力検査で引っ掛かりました。

高音があまり聞こえていない、または聞こえづらい。実生活に支障があるレベルではないが「聞こえ」が弱いとのこと。検査員の方によると「誰でも年をとると、高音は聞こえづらくなっていくものなんですよ」「ただ、47歳ではまだ若いので加齢のせいとは言えません」とのこと。

この時点では、軽く考えていました。いや半信半疑でした。受け入れられなくて。

そもそもですね・・・これまで聴力検査は、なめてました。私の人生においては・・・聴力検査は聴力検査ではありませんでした。たいてい検査員の方に案内されて、電話ボックスのような個室に入りヘッドホンをする。音が聞こえたらスイッチを押してくださいねと言われる。「はい」と答えて椅子に腰かける。 そしてガラス戸から見える位置の検査員の手元を見る。信号音を送信する手元を見る。今だと思って「聞こえましたよ」のスイッチで合図を押す・・・。

いわゆるカンニング。聞こえてはいますが、視覚でも確認してました。

ところが、今回の聴力検査ではガラス戸が半透明になっていて検査員の方の様子が見えませんでした。いわゆるカンニング防止策です。

そして・・・私は「高音が聞こえていない」と判定されました。

ああそうだったのか。実は前々から聞こえていなかったのかもしれないと。そう思いました。カンニングの力は、実力ではないのだ。いや、カンニングが上手すぎたのだ・・・。

で、ちょいとショックを受けながら夜、たけおさん(夫)に話しました。

まずカンニングしていたという私に笑い。「何をやっとんや笑」と。

いやー、やっぱ全力を出したいからさ。聴力テストには聴力に加えて視力でも答えてたわけよ、私。 まさかその助っ人が余計だったなんて。でも聞こえていないという事実にはショックでした。子供時代、学校の授業で「聞いてましたか」って先生によく言われたけど。大人になってからも「え、聞いてなかったの」ってよく言われたけど。あれ、注意力散漫なんじゃなくてもしかしたら本当に聞こえてなかったのかも。いろんなことを考えました。そんな不安を打ち明けた私に、たけおさん。

「あのな、近所の耳鼻科行ってこい」

あーたけおさんに心配かけちゃった、精密検査?

「そんでな、耳掃除してもらえ。ちゃんと耳掃除してっか?それ耳垢で聞こえてないんじゃないの」と。

「え・・・まさかー」

と言いながら、私。たんなる耳掃除の問題であってほしいなーと思いました。それにたけおさんが言うんならそうかもしれない、って。で、その数日後に私は耳鼻科を訪ねるわけです。

記録的な猛暑となった7月のある日。仕事帰りの自転車をこぎ息切れをしながら耳鼻咽喉科へ。受付ですぐに呼ばれ診察室へ。先生に事情を話すと耳を診てくれました。耳垢はありませんでした。先生の勧めで精密な聴力検査を受けることに。別室に移動すると、また小さな電話ボックスのような個室に入りヘッドフォンをしました。今度は実力の聴力を確かめたかったので目を閉じてヘッドフォンから聞こえる音に全集中しました。

いやね、もう、怖かったです。

「今現在、音信号は送られているのか」が、わからない。どこからが検査なのかが、わからない。怖いです。敵に攻め込まれるのかってくらいボックス内で怯えてます。

必死に耳を澄まします。でも、自分は聞こえてないのではないかという恐怖が邪魔して

心臓がドキドキして、いつ手元のスイッチを押していいのかわからなくて、ハラハラ。

そして、暑かった。締め切った個室内には冷房がなく・・・冷静さを失うほどに暑かった。そして恐怖と暑さによる息苦しさで私の緊張感がMAXになっている時。

足元に置いた私のバッグのスマホが「ぴこーん」て鳴りまして、

私は音信号が聞こえた時に押すスイッチを光の速さで早押ししていました。

まさかの誤作動。で、やばい間違えたってことでますますテンパって体温は2度は上昇したと思います。もう普通の精神状態ではありませんでした・・。はやく、早く終わってくれ・・・!地獄のような検査にハアハアゼイゼイしていたら、小さな個室のドアがノックされ若くてかわいい看護婦さんが現れました。もう、天使に見えました。一緒に冷房の風も入ってきて。抱きつきたかったくらい。で、その天使のような看護婦さんが私のヘッドフォンを調整して言いました。「次、反対の耳でーす」と。私はすぐさま「あの、あとどのくらいの時間がかかりますか?」と聞きました。

「あらーお時間大丈夫ですか?」って心配してくれたけど、そうじゃなくて

「いえ、あの、暑くて。」って、ちょっと悪態ついてしまいました・・。

「そうですね、がんばってくださいね、もうちょっとなんで」となだめられ・・最後まで全力で聴力検査を受けました。そして、検査後に天使のような看護婦さんが私の息子の元同級生だとわかり。   ハアハア言いながら検査受けてそのうえ悪態ついたことが恥ずかしかったです・・。

精密な聴力検査の結果、やはり高温が聞き取れていない。とのこと。先生は同じ見解でした。今すぐ治療が必要というレベルではないが、聞こえていないことは確か。様子をみてください、と。

ショックでした。

結果そのものがショックだったことに加え、お会計が3,500円だったことも。息子の元同級生に悪態ついた自分にも。なにやってんだ、私。ぜんぶぜんぶ自己嫌悪に。

認めたくない気持ちに、しっかりしろ、自分。と思い直し、自転車をこいで帰りました。

そしたら、夜。その日は小池栄子さん主演のドラマ「新宿野戦病院」が見たくて、いつもはつけないテレビをつけたら。それがちょうど「二十代後半から耳が聞こえなくなった女性のドキュメンタリー」やってて。引き込まれるように見ました。で、見てるうちに泣けてきて。元々は聞こえる人生を送っておられた方が、だんだん聞こえなくなり、完全に聴力を失ったと。好きだった音楽CDは今も保管しているとのこと。販売員をされていたけれど、聞こえなくなってからは転職したとのこと。様々をのりこえて、仲の良い昔からの友人と手話で会話をされる姿など。

なかでも、その方のおっしゃった言葉は私の胸に刺さりました。

「聴力を完全に失うまでが、いちばんつらかったかもしれない。聞こえなくて、聞き返したいのだけど、聞き返すと『大丈夫だよ何でもないよ』と言われることも多かった。そうすると聞き返すことが迷惑になる気がして。会話についていけず、想像であやふやな返事をしてしまったり。いつも疎外感がありつらかったです」と。

私の母(73歳)はずいぶん耳が遠くなり。私は母に補聴器をすすめていました。会話がままならないと疎ましく・・・なぜ補聴器をつけないのだろうと不遜な考えを持っていました。それがこんなにつらかったなんて。

母が近所をウォーキングすることや車の運転をすることを思うと、いろんな生活音が聞こえていないということは心配です。それは変わりませんが、聞こえないというつらさを理解せずに自分の考えを押し付けていた自分はあんまりにも冷たい。私は母に優しくなかった。母に悪いことしちゃったな・・。

これから、母に何度聞き返されようと。何度でも笑顔で答えたいと思います。なぜなら母は私の声を聞きたいと思ってくれている。話したいのだ。母も、私も。億劫がるなんてもったいない話です。今までの私、もったいないことをしていました。いずれ私も聞こえなくなる日がくるかもしれないけど、今はまだ聞こえる。もっと一生懸命、人の話を聞きたいと思います。

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